何もかもを笑って許せる方のみ先へお進みください。
見てしまった後での苦情は御勘弁を。
両原作のファンの方々へ
「ほんまにめっちゃごめんなさい」
ダンブルドア様の庭に集う(自称)乙女達は、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐりぬけていく。
けがれをしらない心身を包むのは、深い色の制服。
スカートのプリーツは乱さないように、
白いセーラーカラーはひるがえさないように、
ゆっくりと歩くのがここでのたしなみ……
私立ホグワーツ女学園、ここは乙女の園…………なワケがない。
ダンブルドアがみてる
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、お姉さま」
放課後のホグワーツ女学園に少女達(多分)の可愛らしい(一部野太い)声が響く。
広い敷地内、その一角に立つ黒薔薇の館では午後のお茶会が開かれていた。
「どうぞお姉さま、紅茶ですわ」
「………」
紅薔薇のつぼみである赤毛の少女がアーモンド形の翡翠の瞳をこれ以上なくきらきらさせながら『姉』であるリドルへと楚々と茶器を差し出す。
しかし差し出された方の彼……もとい彼女は茶器が揺れた折の波紋がゆっくりとおさまるのをその両の紅の瞳でじっと見ながら眉間に皺を寄せる。
芳醇な香りを放つ琥珀色の液体。
「……ふむ」
小さく呟いて、リドルは備えつえられていた銀のスプーンを取り出し、かちゃかちゃと紅茶を混ぜる。
そうして取り出したスプーンは黒く腐食していた。
同じ席で紅茶を飲んでいた緑薔薇のつぼみであるシリウスはぎょっとして目を見開く。
しかしリドルは優雅に持っていたスプーンを皿に置くと、落ち着いた声音で『妹』に。
「色も香りもほぼ完璧だね。これならそこらへんの馬鹿ぐらい騙せるだろう。だけど僕に挑むのにはまだまだ早い」
言って右手を軽く上げ、花柄の高価そうな茶器を下げさせた。
「さすがですわ!お姉さま!」
両手を胸の前で組んで陶然と声をあげるのはリリー。
「今日の毒薬はハーマイオニーの作品だね?」
「は、はい!」
つい、と紅い目を向けられて、ハーマイオニーの頬がわずかに上気する。
「いい出来だよ。強いて言うなら湯気に混じって少しトリカブトの匂いがしたのが気になったけど」
「あ、ありがとうございます!次は気をつけますっ」
「そう。頑張って」
「お姉さま……」「紅薔薇さま……」
整った顔立ちに微塵も微笑を浮かべることのないリドルだったが、その『妹』であるリリーとさらに『孫』であるハーマイオニーはそんな彼に心の底から心酔しているようだった。
紅薔薇とそのつぼみ、そして紅薔薇のつぼみの妹はこの学園でも最高峰の人気を誇る姉妹である。
美しい容姿と落ち着いた物腰、上品な身のこなしが全て一流のもので、校内にはファンが多い。
しかし彼女らの隠れた実態を見ればそんなことは消し飛ぶんだろうなーと緑薔薇のつぼみは乾いた笑いを口元に浮かべつつ紅茶を飲み干した。
紅薔薇姉妹の最近の日課は暗殺方法を編み出すこと。
一体どこに恨みを抱く相手が居るのか、それともただの退屈しのぎなのか。
嬉々として新薬を開発しては紅薔薇さまであるリドルに査定を頼んでいる。
紅薔薇の姉妹たちは揃いも揃って成績が良い上に、三年生であるリドルは魔法薬学で今年特許を取ったほどだ。