確か、と緑薔薇のつぼみであるシリウスはお茶請けに出されたココアクッキーをつまみながら記憶を掘り返す。
先週までは暗殺方法は薬ではなく距離を置いた獲物をいかに正確に打ち抜くかという物理的な方法の研究だったな、と。
「あぁ、だけど死んだ後のこともかんがえなくちゃいけないな。毒の成分が強すぎて死体が腐食するなんて、考えただけでもおぞましいし」
「そうですわね。でもどう調整したらよいのか……動物実験にも限界がありますから
困ったように眉根を寄せて、片手を頬にあてるハーマイオニーは確かに愛らしい。
だがその口から出る言葉は物々しいという度を越えている気がする。
リドルとハーマイオニーが二人して悩んでいると、リリーがにっこりと打開策を打ち出した。

「でしたら手近な人間を使った臨床実験をすればよいのでは?幸いにもわたくしの為になら命を投げ出しても構わないという 黒髪クセ毛の眼鏡野郎……あら、失礼。とりあえず、わたくしのファンにそのような忠義に厚い者がおりますからどうぞお使いくださいな」
「本当ですか、お姉さま」
「ええ、本当よ。ハーマイオニー、彼、じゃなくて彼女、多分殺しても死なないから致死量以上与えてもきっと平気よ」
「いいモルモットを飼ってるじゃないか。さすがだねリリー」
「うふふ、光栄ですわ、お姉さま」
紅薔薇姉妹達の和やかな談笑を、凍りつくような思いで聞いていたシリウスは、自分の『お姉さま』に向かってぎちぎちと首をまわす。
「なぁ、俺あんたの『妹』やめたい」
だがそれを耳にした緑薔薇さまであるリーマスは、新しく注いだ紅茶に砂糖を十五杯正確に計って入れながら冷ややかに微笑んだ。
「『お姉さま』だろう?それと、やめたいっていうのも却下。君がいなくなったら誰が僕の世話をするの」
「俺は『お姉さま』の世話係じゃねーぞ」
普通は上級生が下級生の面倒をみるものだろう、と反論するが。
「何言ってるの」ときょとんとした顔でにべもなく返される。



「姉妹の契りを結んだ時点でシリウス、君は僕の下僕でしょ?」



当たり前のことのように言うリーマスに、シリウスはがっくりと項垂れたのだった。





完成日
2005/08/04






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